相続した連棟式建物は売却できる?長屋・テラスハウスの切り離し・再建築で確認したいポイント

この記事の結論
相続した実家が、隣の家と壁がつながった「連棟式建物」や「長屋」だったとしても、それだけで売却できないと決まるわけではありません。
まず確認したいのは、見た目ではなく、その建物が建築・登記上どのように扱われているのか、隣接する住戸と構造的にどのようにつながっているのか、そして自分の住戸を切り離した場合に再建築できる敷地なのかという点です。
特に注意したいのは、「自分の所有部分だから自由に解体できる」「切り離せば普通の土地として売れる」とは限らないことです。
建物の構造、界壁、敷地の分け方、接道条件、過去の建築確認、隣接住戸との関係などを整理したうえで、一般の買主、投資家、隣接所有者、不動産会社による買取など、物件に合った売却方法を比較することが大切です。
目次
連棟式建物・長屋とは
相続した実家を調べていると、不動産会社や建築士などから「これは連棟式ですね」「長屋になっています」と言われることがあります。
本記事では分かりやすく、複数の住戸が横につながるように建てられている住宅を「連棟式建物」と呼びます。
例えば、次のような建物です。
01
隣の住戸と壁がつながっている
外から見ると、一つの大きな建物を複数の世帯で分けて使っているように見える住宅です。
02
各住戸にそれぞれ玄関がある
マンションのような共用廊下を使わず、それぞれの住戸から直接屋外へ出られる形があります。
03
古い住宅地に残る長屋
建築から長期間が経過し、建築当時の資料や増改築の経緯が分からなくなっていることがあります。
04
テラスハウスのような住宅
複数戸が連続して建ち、それぞれに玄関や専用部分が設けられている住宅もあります。
「連棟式」という見た目だけで判断しないことが重要です
同じように見える建物でも、建築上の「長屋」として一体の建物になっている場合もあれば、隣接する建物同士が非常に近く建っているだけの場合もあります。
さいたま市の空き家等対策に関する資料でも、外見上はいわゆる長屋等であっても、隣接する住戸との界壁が二重となっているなど、それぞれの住戸が別個の建築物となっている場合があることが示されています。
相続した連棟式建物でも売却できる可能性があります
連棟式建物であることが分かると、「普通の一戸建てではないなら売れないのでは」と不安になるかもしれません。
しかし、連棟式建物だからという理由だけで、売却できないと決まるわけではありません。
重要なのは、どのような状態の連棟式建物なのかを整理することです。
これらを確認した結果、建物をそのまま利用したい一般の買主や投資家が検討できる場合もあれば、隣接する住戸の所有者との売買が現実的な場合もあります。
「連棟式=売れない」と最初から決めつけないことが大切です
通常の一戸建てより確認事項が増えることはありますが、物件の状態を調べる前に売却可能性や価格を決めつける必要はありません。
まず確認したい5つのポイント
連棟式建物を売却するときは、一つの資料だけで判断するのではなく、建物・土地・道路・過去の建築資料を組み合わせて確認します。
01
土地・建物の登記
相続した土地と建物の名義、面積、建物の種類、他の住戸との登記上の関係などを確認します。
土地についても、自分の住戸部分だけで一つの土地になっている場合もあれば、複数の土地や共有持分が関係している場合があります。
02
建物の構造
隣接する住戸との間にどのような壁があるのか、屋根や柱、梁などがどのようにつながっているのかを確認します。
外から見ただけでは分からないこともあるため、必要に応じて建築士などによる確認が必要になります。
03
建築当時の資料
確認済証、検査済証、建築計画概要書、設計図などが残っていれば、建築当時の状況を整理する重要な材料になります。
古い建物では、すべての書類が残っていない場合もあります。
04
敷地と道路の関係
切り離した後に新しい建物を建てられるかを考える場合は、その住戸が使う敷地だけで接道条件を満たしているのかを確認する必要があります。
建物が現在存在していることと、将来単独で建て替えられることは別の問題です。
05
過去の増改築・切り離し
長い間に一部の住戸だけが建て替えられたり、増築されたりしている場合があります。
現況と建築当時の図面が一致しているとは限らないため、過去の経緯と現在の状態を分けて確認します。
外見だけでは「一つの建物」か判断できない場合があります
連棟式建物で特に注意したいのが、外から見た形と、建築上・構造上の扱いが必ずしも同じではないことです。
例えば、隣の家とぴったり接しているように見えても、実際にはそれぞれ独立した壁を持つ別個の建築物になっている場合があります。
反対に、一戸ずつ玄関や所有者が分かれていても、建物としては複数の住戸が一体となった長屋として建築されている場合があります。
別個の建築物である場合
外見上はつながって見えても、それぞれが独立した建物として確認できれば、売却や将来の工事を検討する前提条件が変わる可能性があります。
一体の長屋である場合
自分の住戸部分だけを変更すると、残る建物の構造や界壁、屋根、防水などに影響する可能性があるため、より慎重な確認が必要になります。
そのため、「壁がつながっているから長屋」「登記が分かれているから完全に別の建物」といった一つの情報だけで判断することは避けた方がよいでしょう。
自分の住戸だけ切り離し・解体できるのか
連棟式建物を相続した方から多い疑問の一つが、
「自分の家だけ取り壊して、土地として売ればいいのでは?」
という考え方です。
しかし、一体となった建物の場合、自分の所有部分だけを単純に取り壊せるとは限りません。
切り離しを検討するときには、少なくとも次のような事項を確認する必要があります。
建物の一部を変更することで隣接住戸へ影響が生じる場合は、建築上の確認だけでなく、所有者間の調整が必要になることがあります。
先に解体工事を進めることは避けましょう
連棟式建物は、一般の一戸建てと同じ感覚で「古いから解体して更地にする」と判断すると、切り離し後の建物や再建築条件について問題が分かることがあります。
解体の可否、残る建物への影響、再建築の可能性を確認してから判断することが大切です。
参考となる公式情報
切り離せても、再建築できるとは限りません
もう一つ分けて考えたいのが、「建物を切り離せるか」と「切り離した土地に新しい建物を建てられるか」は別の問題だという点です。
仮に構造上、自分の住戸だけを切り離せるとしても、新しい建物を建築する場合には、現在の法令や土地の条件を確認する必要があります。
敷地が建築基準法上の道路に適切に接しているか
単独の敷地として必要な接道条件を満たしているか
用途地域、建ぺい率、容積率、高さなどの制限に適合できるか
地区計画など、その地域独自の建築制限がないか
現在の敷地境界や土地の形状で建築計画を立てられるか
さいたま市でも、地区計画の区域内では、建物の用途・構造・敷地について地区ごとの制限が設けられている場合があります。
したがって、「隣の住戸は建て替えているから自分もできる」「以前は建っていたから同じ建物を建てられる」といった理由だけで判断することはできません。
道路条件については、これまでの記事でも詳しく解説しています
連棟式建物の敷地が私道に面している場合や、単独で切り離した後の敷地が未接道となる場合は、道路についても別途確認が必要です。
参考となる公式情報
売却前に確認したい資料
連棟式建物は、現地を見るだけでは過去の建築経緯や権利関係まで確認できません。
まずは、手元に残っている資料と行政・法務局で確認できる資料を整理します。
01
土地・建物の登記事項証明書
土地と建物の名義、面積、建物の種類、土地の権利関係などを確認します。
02
公図・地積測量図など
各住戸が使用している土地の範囲、道路との位置関係、土地の分かれ方などを確認する材料になります。
03
建築計画概要書
確認申請時の建築主、建築場所、建物の高さ、敷地面積、建築面積、延べ面積などを確認できる資料です。
さいたま市では、保存されている建築計画概要書について閲覧や写しの交付を行っていますが、確認できる年度や資料の有無は物件によって異なります。
04
確認済証・検査済証など
実家に残っていれば大切に保管しましょう。
さいたま市では、現存する建築台帳について、確認済証等の交付年月日や番号を確認できる制度があります。ただし、資料の保存状況や確認できる事項は建築時期・物件によって異なります。
05
設計図・過去の売買資料
建築図面、増改築時の資料、以前の売買契約書、重要事項説明書などが残っていれば、建物の成り立ちを確認する手掛かりになります。
さいたま市の公式情報
連棟式建物の主な売却方法
建物と土地の状況を整理したら、どのような買主に売却できる可能性があるのかを比較します。
連棟式建物だからといって、最初から一つの売却方法に限定する必要はありません。
売却方法 01
一般の買主へ売却する
建物をそのまま住宅として利用でき、権利関係や将来の修繕・建て替えについて必要な情報を整理できれば、一般の買主が検討できる場合があります。
住宅ローンの利用可否は金融機関や物件、買主の状況によって異なるため、一律に判断することはできません。
売却方法 02
投資家へ売却する
現在の建物を修繕して賃貸住宅として利用する投資家が検討する場合があります。
ただし、将来の修繕や再売却も考えるため、投資家への売却であっても建物や道路の調査が不要になるわけではありません。
売却方法 03
隣接する住戸の所有者へ売却する
連棟式建物では、隣接する住戸の所有者が購入を検討する場合もあります。
ただし、隣接所有者だから必ず購入するわけではなく、建物や土地の状況、購入目的によって判断は異なります。
売却方法 04
不動産会社に買い取ってもらう
一般の買主への売却が難しい場合は、不動産会社による買取も選択肢になります。
売却までの期間を短くしやすい一方で、一般売却より売却価格が低くなる可能性があります。
調査をせず、最初から安い買取だけに絞る必要はありません
「連棟式だから一般には売れない」と言われても、建物の構造、敷地、道路、隣接住戸との関係を整理すると、別の売却方法を検討できることがあります。
まず物件の状態を確認し、そのうえで売却先を比較することが重要です。
売却前に避けたい判断
連棟式建物は、最初の判断によってその後の売却方法が変わることがあります。
「古いから」と、建物の状態を確認する前に解体を決める
自分の所有部分だから、隣接住戸への影響を確認せず切り離し工事を進める
隣の住戸が建て替えていることだけを理由に、自分も再建築できると判断する
「連棟式だから住宅ローンは使えない」と一律に判断する
調査をしないまま「買取しかできない」と考え、売却先を決める
特に、解体してしまった後に単独での再建築が難しいと分かった場合、現況の建物を利用したい買主への売却可能性を失うことがあります。
売却を急いでいる場合でも、まず現在の建物と土地にどのような可能性が残っているのかを確認することが大切です。
弊社・ピース株式会社に相談できること
ピース株式会社では、埼玉県を中心に全国の難あり・ワケあり不動産について、お客様に寄り添い最後まで諦めない姿勢でお手伝いしています。
不動産全般の無料査定
道路条件や接道状況の整理を目的とした、役所・住宅ローン担保の無料調査
(一部、遠方地に関しては交通費をご相談する場合があります)
私道共有者・通路権利者・隣地関係者・その他権利者との無料交渉
投資家、隣地、一般買主など多方面にわたる売却先の紹介
再建築不可や未接道の物件は、最初の見立てを誤ると、売却価格や売却期間に大きく影響します。一方で、状況を丁寧に整理することで、高値で売却できる可能性があります。
まとめ
相続した実家が連棟式建物や長屋だったとしても、それだけで「売れない」「切り離せない」「再建築できない」と決まるわけではありません。
まず確認したいのは、次の点です。
- 建物が建築上・構造上どのような状態なのか
- 土地と建物がどのように登記されているのか
- 隣接する住戸とはどのようにつながっているのか
- 自分の住戸だけを切り離せるのか
- 切り離した後の敷地で再建築できるのか
- 過去の確認済証や建築計画概要書などが残っているのか
- 一般買主、投資家、隣接所有者、買取のどの方法が適しているのか
連棟式建物は、建物だけではなく、土地・道路・隣接住戸との関係を一緒に確認することが重要です。
「古い長屋だから仕方がない」と判断する前に、現在の建物と土地にどのような可能性が残っているのかを整理してから、売却方法を比較しましょう。
まだ売却を決めていない段階でもご相談いただけます
「隣の家とつながっているけれど、売れるのか?」から、
一緒に整理しませんか?
ピース株式会社では、さいたま市周辺・埼玉県内の相続不動産を中心に、連棟式建物の状況、道路条件、行政資料、過去の建築資料などを確認し、物件に合った売却方法を一緒に考えます。
建物の構造や再建築の可否が分からない段階でもご相談いただけます。
さいたま市周辺・埼玉県内の物件を中心にご相談を受け付けています
※本記事は、連棟式建物・長屋等の売却や建築に関する一般的な情報を説明するものです。実際の建物の扱い、切り離し・解体の可否、再建築の可否、隣接所有者との権利関係、住宅ローンの利用可否等は、建物の構造、敷地、自治体、建築時期、契約内容等によって異なります。必要に応じて、行政機関、建築士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士等への確認が必要です。

